#短歌 #tanka
「夏なんか嫌いだよ」って嘘を吐くことも含めて夏を味わう
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夏が嫌いだ。
暑い。汗をかく。日に焼ける。etc…
冬のほうがわたしにはずっと好ましい季節だ。
でも「夏なんか嫌い」と言っている瞬間が一番強く夏を感じてしまう。
そのことに何となく悔しいような、してやられたような感覚を得る。
暑い、と思いながら額の汗をぬぐう。
熱くなってしまった息を少し吐いて、空を見る。
低い位置に真っ白い入道雲。
その上には他の季節よりも濃い青が広がる。
少し眉をしかめて、
(夏なんか嫌いだ)
と思う。
だが、その青に、暑さに、他のどの季節よりも「生きている」と感じる。
なんとなく認めたくない気分になって、声に出す。
「夏なんか嫌いだ」
太陽から逃げるようにわたしは日陰を目指した。