河原町星屑通東潜ル

短歌とエッセイ。Twitter https://mobile.twitter.com/moeori

「夏なんか」

#短歌 #tanka

 

「夏なんか嫌いだよ」って嘘を吐くことも含めて夏を味わう

 

*

 

夏が嫌いだ。

暑い。汗をかく。日に焼ける。etc…

冬のほうがわたしにはずっと好ましい季節だ。

 

でも「夏なんか嫌い」と言っている瞬間が一番強く夏を感じてしまう。

そのことに何となく悔しいような、してやられたような感覚を得る。

 

暑い、と思いながら額の汗をぬぐう。

熱くなってしまった息を少し吐いて、空を見る。

低い位置に真っ白い入道雲

その上には他の季節よりも濃い青が広がる。

少し眉をしかめて、

(夏なんか嫌いだ)

と思う。

だが、その青に、暑さに、他のどの季節よりも「生きている」と感じる。

 

なんとなく認めたくない気分になって、声に出す。

 

「夏なんか嫌いだ」

 

太陽から逃げるようにわたしは日陰を目指した。