河原町星屑通東潜ル

短歌とエッセイ。Twitter https://mobile.twitter.com/moeori

3000冊を思い出しながら〜徒然推薦図書〜

 

1000〜2000冊の本を読んだという人のおすすめ本がわたしにはまったく刺さらなかったので、わたしが人に薦めるならどの本がいいかなあと考えてみました。

 

そうですね、一番多く再読している本であれば、太宰治人間失格ですし、最近再読して楽しかったのは森博嗣の『四季』シリーズ

森博嗣はあのすべてがFになるを含むS&Mシリーズから始まる森博嗣ワールド楽しいんですよねー。同じ世界線を舞台に主人公が変わっていく小説群。

ワールド、みたいな観点でいうなら森見登美彦の腐れ大学生ワールドも大好き。代表作なら京都が舞台のラブストーリー夜は短し歩けよ乙女でしょうけれども、わたしは書簡形式小説の『恋文の技術』もおすすめしたい。

夜は短し歩けよ乙女』は本屋大賞の2位で紹介されてた時に表紙が可愛くて買ったんですよね。ジャケ買いです。

本屋大賞といえば、最近のものなら凪良ゆう『流浪の月』が好きでした。誘拐犯と誘拐された少女の、誘拐の後日談としての物語。ああいうままならない恋愛ものも一時期すごいはまってましたね(『流浪の月』が“恋愛”の区分に入るかは微妙ですが)。

ままならない恋愛というなら島本理生が自分的にダントツ。有名なのは大学生と、その高校時代の教師の恋愛小説ナラタージュですが、わたしは主人公の名前が一切出ない恋愛小説『あられもない祈り』か、二人の男性(三人?)の間で揺れ動く『イノセント』を推したい。『イノセント』は苦悩する一人が神父なのが個人的におすすめポイント。

 

…なんだか最近の小説に偏ってますね?

最近のもの以外から選べというなら、二番目に再読回数が多い本を。

わたしが『人間失格』の次に再読を重ねているのは、ドストエフスキー罪と罰。教養のために、などと思って読んだのですが、面白かったですね。主人公やヒロインより、主人公の妹のドゥーネチカが好きでした。ドストエフスキーならカラマーゾフの兄弟も古典新訳文庫と岩波文庫で読みましたが、岩波版が好きですね。未完なのがもったいない…。

ロシア関係ならロシア語の先生をしてらっしゃる黒田龍之助先生の『ロシア語だけの青春』がわりと最近ちくま文庫で出ましたね。あれは語学を志す人間には良い本です。黒田先生がロシア語に出会い、魅了されて突き進んでいく様子を観察できるエッセイです。語学分野なら同じ黒田先生の『ロシア語の余白の余白』あるいは『寝る前5分の外国語』が良いですね。『ロシア語の余白の余白』はロシア語話者あるある〜みたいな感じの本で、『寝る前5分の外国語』は黒田先生がいろんな言語の語学書を試し読みする本。いやー、世界にはいろんな言語がありますね…。

言語や勉強に関する本なら読書猿さんの『独学大全』は外せないですね。辞書とか手引のように使うことを想定された本ですが、通読してからのほうが全体を余すことなく使える気がしてます(ただし鈍器本)。

鈍器本、といえば京極夏彦先生ですよね。姑獲鳥の夏とか1冊の厚みがとんでもないですし、オチもとんでもない…。こんなのアリ…?ってなりました。

ただ、シリーズの厚み、となると他の本もいろいろありますね。(シリーズの厚みかつ1冊の厚みなら川上稔境界線上のホライゾンになりそうですが…)

わたしが1シリーズとしてかなり長かったと感じたのは小川一水『天冥の標』シリーズ。架空の病気のパンデミックが話の中心のSFです。シリーズが長いだけでなく作中時間の長さも億年とか余裕で超えてくる長さでした。

パンデミックといえばカミュ『ペスト』はコロナ禍の流行の間に読みました。病を前にした人々の振る舞いを読んでいると、コロナ禍含め、病原菌やウイルスと人類との歴史を考えてしまいますね。

それで言うならジャレド・ダイアモンド『銃・病原菌・鉄』もすごかったです。私淑している先輩に倣って読みました。歴史とは人間が意識的に作れるものではないようです。

歴史といえば山川の『もういちど読む山川日本史』『もういちど読む山川世界史』は大人になってから読んで良かった本に含まれますね。学生だった昔より歴史が深く楽しめます。なんとなくで歴史を学ぶより、何があったから、何故今こうなのか?を考えながらのほうが気づきがありそうです。

学生のころは司馬遼太郎歴史小説は好きでした。燃えよ剣とか。土方さんの最期の台詞が格好良すぎる……。最近はいわゆる司馬史観の問題点とかも聞くのですが、あれはあれですごい功績だと思います。歴史小説といえば最近は吉川英治『新・平家物語を読んでいます。敦盛のあたりとか、たぶん古典そのものよりはいろいろ脚色されているのでしょうけれど、まあ小説ですので楽しくて良いのです。

歴史を面白く、というのではなく、歴史をなるべくその場にいた人の目線で、となると日記文学になってくるのでしょうか。昔の貴族の日記とかだと、合戦物として古典文学で盛り上がってる戦がわりと他人事扱いだったりするんですよね。後深草院二条とはずがたりはそういう感じ。元寇なんかより上皇のご病気が〜!みたいな雰囲気の描写に、そうか、当時はそんな感じなのかー……と驚いたり。

とはずがたり』は渡部泰明先生監修の杉田圭『恋いのうた。』有明の月のところが漫画になってましたね。妄執に駆られた高僧……。有明の月も、雪の曙も、後深草院もそれぞれに欠点はあれど、二条にとっては大切なロマンスだったのでしょう。

渡部先生は最近は『100分de名著』の古今和歌集も携わってらっしゃいましたねー。

その『古今和歌集』をボロッボロに叩いてるのが萩原朔太郎『恋愛名歌集』古今和歌集含め勅撰集から朔太郎チョイスの名歌を集めたアンソロジー古今和歌集憎しなのは、古今和歌集をよいしょしていた当時の文学界への恨みつらみから……?

そんな朔太郎の作品含め、文豪の作品が素敵な絵師様たちの手で絵本チックになっている「乙女の本棚シリーズ」も好き。夢野久作『瓶詰地獄』とか、泉鏡花『外科室』とか持ってます。『外科室』の後半の台詞と、繰り返しの部分が、ずっと昔の小説なのに響きます。

『瓶詰地獄』には『聖書』が出てきますけれど、今わたしは新共同訳で読んでる最中です。宗教関係の基礎を抑えたくて……。

宗教といえば魚豊『チ。』はすごかったですね!天動説VS地動説というか、宗教VS真実への知識欲、みたいな。わたしもできれば知識欲の側に立っていたい。

地動説云々なんて今では過去の話ですけれど、まだまだ人間にはわからないことがたくさんあってそれを求めている人は格好いいですね。そういう考えなので理系の人が好きです。

JAXA川口淳一郎さんのはやぶさ そうまでして君は』とか科学系ノンフィクションなのに下手な小説より胸熱で泣けました。はやぶさは奇跡と浪漫の塊ですよ。いやー、科学者って格好いい…。

科学者ですが格好いいというより笑ったのは前野ウルド浩太郎さん『バッタを倒しにアフリカへ』。ぜひ表紙だけでも見てほしいのですが、表紙から攻めすぎてません??……良いですよね!!?

理系ノンフィクションならサイモン・シンフェルマーの最終定理は鉄板でしょう。数学という温度をまったく感じていなかったジャンルに感動するとは…。それにしても「ここに記すには余白が」とか丸投げ甚だしい……。

ノンフィクション系なら北海道の熊害ノンフィクション、木村盛武『慟哭の谷』も前半は良かった。後半はなんと言いますか、好みが分かれそうですけれど…。今年は熊害が全国的に話題になりましたね。

熊そして北海道といえば野田サトルゴールデンカムイは昨年あたりブームになりましたね。関連図書として出ていた中川裕アイヌ文化で読みとく「ゴールデンカムイ」』も興味深く読みました。アイヌならアイヌ神話の絵本、萱野茂『木ぼりのオオカミ』も良かった。

アイヌ語白水社のニューエクスプレスシリーズの語学本の棚に並んでいたような……?ニューエクスプレスは日本だとなかなか見かけない言語の取り扱いがあって、並んでいる棚を眺めているだけで楽しいのですよ。ニューエクスプレスでは最近『ニューエクスプレス ウクライナ語』を図書館で立ち読みしました。ご時世もありますし、ウクライナ関係本も読んでみたりしてます。とはいえウクライナ関係の本を探すのはなかなか日本では難しいですね。そんな中でも平野高志ウクライナファンブック』は本屋で平積みされているのを見ました。これは良い本でした。後半は旅行ガイドっぽくなっていて今のウクライナの雰囲気を味わえますし、前半はウクライナの歴史も扱っています。

旅行ガイドといえば、地名が出てくる本はガイド本そのものでなくてもその土地に行ってみたくなりますよね。いわゆる聖地巡礼。わたしが聖地巡礼したのは西尾維新戯言シリーズ2巻目クビシメロマンチスト人間失格・零崎人識〜』西尾維新のデビュー作クビキリサイクル〜青色サヴァン戯言遣い』のシリーズ(戯言シリーズ)ですね。人識くん登場の巻。聖地巡礼で京都をうろうろしました。西尾は化物語で始まる物語シリーズで一躍有名になりましたが、わたしとしては戯言が一番です……!ヒロインの青色サヴァン(もしくは“暴君”、“歩く逆鱗”、“デッドブルー”または“絶縁娘”)こと玖渚友ちゃんが人生最推しです。今年は戯言の正統続編『キドナプキディング〜青色サヴァン戯言遣いの娘〜』も出ましたが、キドナプの続きは、盾ちゃんの物語の続きはいつか出るのでしょうか…?

 

まだまだ続いてしまいそうなので、とりあえずわたしが半生をかけて追いかけてる推しの物語が出たところで今回は打ち切ります。

 

あなたに刺さる本がどこかで見つかりますように!